素直になんかなれない
…………………
「おはよーっ!」
「おはよ!ねぇねぇ、昨日のさ~……。」
廊下に響く生徒たちの声が
あたしの横を通り過ぎてゆく。
あたしは俯いたまま、教室へと重たい足を伸ばした。
だけど、いざ自分のクラスを前にすると
躊躇してしまって、なかなか扉が開けられない。
…昴に会うのが、怖い。
あんな喧嘩をしたとはいえ
あたしは、昴の着信もメールにも返信しなかったのだ。
いつもなら、喧嘩したって
昴の連絡を避けたりなんかしなかったのに。
いくら昴が優しいからって
今回はさすがに怒ってるかも……。
やだな、もう帰りたいよ…、
ぐっとカバンを持つ手に力を込めたその時
ガラっと開いた扉に、あたしの心臓は止まりそうになった。
「あれ、寧々!何してんの?」
「ヨ、ヨッシー…、」
扉を開けたのは、相変わらずご機嫌そうなヨッシーで。
…ビ、ビックリしたぁ。
バクバクと音を立てる心臓に
あたしは人知れず胸を撫で下ろす。