素直になんかなれない
そんなあたしに
ヨッシーは手を伸ばすと
「てか、寧々が髪下ろしてるなんて珍しくない!?」
そう言って、胸元まであるあたしの髪を撫でた。
「…時間、なくて…、」
「嘘っ、寝坊したのぉ~?」
「あ…うん、まぁ…、」
朝からハイテンションのヨッシーは
お構いなしに話を振ってくるけど
正直、あたしはついていけなくて
無理矢理、笑顔を貼り付ける。
「とにかく入ったらっ?」
「…え、う、うん、」
促されるまま、恐る恐る教室へと足を踏み入れた。
だけど、あたしの足は
次の瞬間、歩く事を止めてしまう。
「っ、寧々!」
愛しい人の声が
すぐにあたしを呼び止めたから。
ゆっくりと目線をずらすと
まず目が合ったのは、昴じゃなくて美帆だった。
美帆は頬杖をついて
冷たい視線を投げつけてくる。
ぐっと唇を噛み締めると
昴は躊躇う事もなく、あたしに向かって歩いて来た。
その顔は、どこか安心したような
安堵の色が滲んでいて、あたしの胸は容赦なく締め付けられる。