素直になんかなれない


クラスの皆が
あたしたちの張り詰めた空気に、視線を集中させる。


昴は、それ以上何も言わなかった。

あたしも
もう、何も言えなくて。



その場しのぎの言葉とか
気の利いた言葉なんて、今のあたしには

これっぽちも
思い浮かばなかった。




そのまま、昴を通り過ぎ
無言で自分の席に着くあたし。


昴の傷ついた目が
背中に突き刺ささって

胸が、痛くて…苦しくて。




シンと静まった教室で
あたしは一人小さく息を吐き出した。


…もう、やだ。
何もかも、全部…っ。



それからしばらくして
教室に入って来た先生により

止まっていた時間を取り戻すかのように
自分たちの席へ着くクラスメート。




だけど、あたしの心は

あの瞬間、時間を失ってしまった。



些細な事で出来た二人の溝も

昴に背を向けた事によって広がった距離も


それは、きっと
全部あたしのせい。




だからこそ、あたしは
不甲斐ない自分を、胸の奥で責め続けた。







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