素直になんかなれない


…とか言ってるあたしも
実はその内の中に居た一人。

昴の人懐っこい笑顔に、気が付けば心ごと惹かれていた。




だけど、今じゃその逆で。



輪の中に居るあの笑顔は、あたしの胸を締め付けて仕方ない。



その笑顔を
他の女の子に見せないで。

そんな優しい目を、他の女の子に向けないでよ。



昴はあたしの彼氏なんだよ?


どうして
他の子に、“昴”って呼ばせるの?

どうして
あたし以外の子に、優しくするの?



どうして―――。



切なくて、苦しくて、寂しくて。

そんな日々を繰り返す度
積み重ねられ、作られてく可愛くないあたし。


自分を隠す事ばっかりして
昴の前じゃ、意地っ張りになっちゃって。



こんなんじゃ
昴に嫌われちゃう。

愛想尽かされちゃうかもしれない。



わかっていても
一度作られた可愛くないあたしは、今日もやっぱり意地張って言うんだ。




「昴、あたし先に帰るから。」



どうして
素直になれないんだろう。


そんな自分が
酷く、嫌でしょうがない。






< 5 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop