素直になんかなれない


――放課後。


最後の挨拶を終えて
あたしは素早く帰り支度を始めた。


今日の教室は
とにかく居心地が悪くて。



帰ったら
眠くなるまでひたすらテレビを見ていよう。

そうしたら、涙が出るくらい
お腹が痛くなるくらい笑って、全て忘れちゃえばいい。


そんな事ばかり考えていた。




「寧々、もう帰るの?」

「…うん、また明日ね。」


カバンを肩に掛け、ヨッシーに手を振る。


昴の姿は見当たらない。

多分、またどっかで誰かとバカ話しているんだろう。




そう思いながら
いそいそと教室を出たその時。



「寧々。」


待ち伏せしてました、と言わんばかりに
あたしの腕はその声に掴まれた。


そして昴は真剣な顔つきで
あたしを引き寄せると、人目も気にせず言ったんだ。



「ちゃんと話そう。寧々の気持ち、俺なりに受け止めるから。」





真っ直ぐなその目が、あたしの心を揺さぶる。






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