素直になんかなれない


一人きりの帰り道は
色を失ったように冷え切っていた。


あたしは薄っすらと群青色に染まる空を見上げる。



いつもは昴が隣にいて
ふざける昴に、あたしが笑って。

あまりにバカばっかりするから
怒ったあたしに、昴は「ごめんねっ!」っておどけるの。

最終的に、昴のペースに呑まれ
繋がれたお互いのその手を見て、あたしは気付かれないようにハニかむんだ。



でも…
今、あたしの隣に昴は居ない。

昴の声は、聞こえない。



行っていいよ、そう言ったくせに
口を閉ざしたあたしに向かって

昴は何度も、何度も「ごめんね、」って繰り返していた。



だけど、あたしが聞きたかったのは
欲しかった言葉は

“ごめんね”なんかじゃないんだよ…。



あたしは、『友達』に負けたんだ。


昴はそんなつもりなくても
あたしは、そう感じてしまった。



ねぇ、昴…。

それが、どんなに惨めな気持ちになるかわかる?

どれだけ傷ついたか、わかる?



…わかんないよね。


じゃなきゃ、あたし今
泣いたりなんか、しないもん……。







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