素直になんかなれない
あたしは、言い返さずに
ただじっと美帆に視線を這わせた。
笑いたいなら、笑えばいい。
喧嘩して
傷ついたって
選ばれなくたって
あたしは昴の彼女で
美帆はただの友達、クラスメートだ。
優位にいるのは、美帆じゃない。
あたしのはず、だもん。
美帆は、そんなあたしの視線を睨み返して言う。
「そうやって昴の事困らせて楽しいの?」
「………。」
「そうやって泣けば、昴が追い掛けて来てくれるとでも思ってる訳?」
きゃはは、と笑う美帆の声が
人通りの少ない通学路に響き渡る。
「自惚れって言うんだよ、そうゆうのー。」
わかってるぅ?って尋ねられ
あたしは視線を下げた。
強気だったはずの自分が
みるみる小さくなっていくのがわかる。
自覚してた事を
こうして改めて言われると、すごく辛くて。
「…昴には、奈雲さんは釣り合わないっ!」
そう吐き捨てられた言葉が
まるで刃のように、あたしの小さな虚勢を切り刻んでいった。