素直になんかなれない


あたしは、言い返さずに
ただじっと美帆に視線を這わせた。


笑いたいなら、笑えばいい。


喧嘩して
傷ついたって

選ばれなくたって

あたしは昴の彼女で
美帆はただの友達、クラスメートだ。


優位にいるのは、美帆じゃない。


あたしのはず、だもん。




美帆は、そんなあたしの視線を睨み返して言う。



「そうやって昴の事困らせて楽しいの?」

「………。」

「そうやって泣けば、昴が追い掛けて来てくれるとでも思ってる訳?」


きゃはは、と笑う美帆の声が
人通りの少ない通学路に響き渡る。



「自惚れって言うんだよ、そうゆうのー。」

わかってるぅ?って尋ねられ
あたしは視線を下げた。



強気だったはずの自分が
みるみる小さくなっていくのがわかる。

自覚してた事を
こうして改めて言われると、すごく辛くて。



「…昴には、奈雲さんは釣り合わないっ!」



そう吐き捨てられた言葉が
まるで刃のように、あたしの小さな虚勢を切り刻んでいった。








< 60 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop