素直になんかなれない
じゃあ、今の俺と同じ歳から付き合ってる、って事か…。
しかも兄貴の場合、高校卒業してすぐ上京した訳だから
約4年は遠距離だったっていう事になる。
兄貴も兄貴だけど、真弓さんもよく堪えられたものだ。
そう考えるとすげーな…、と一人心の中で感心してみる。
すると、急に黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、たけ兄は片付けていた手を止めて
俺の隣に座って来た。
ギッ、とベッドが鳴り
俺の体もスプリングの動きに揺れる。
たけ兄は少し間を置き、俺の顔を覗き込むと静かに口を開いた。
「何かあったのか?」
俺を見るたけ兄の目は、大人になった今でも優しい。
たけ兄はいつもそうだった。
8歳も離れてるからか、喧嘩なんて滅多にしなかった俺たち兄弟は
家族でもあるけれど、友達のような存在で。
俺が落ち込んでる時も
悔しくて泣いてる時も
どんな時だって、優しく手を差し延べてくれた。
よく、俺たち兄弟は見た目も中身もそっくりだ、と言われるけれど
俺からしたら、兄貴にはどんなに頑張ったって一生追いつけやしないんだ。