素直になんかなれない


…あーぁ。
人間って、どうしてこんなに欲張りなんだろ…。



昴に片思いしてた時は

たった一言でも、喋れただけで嬉しくて
目が合っただけで幸せで。

そんな些細な出来事でさえ、一日中ずっと笑顔でいられた。



なのに、付き合った途端
あたしの心はワガママばっかり。

だからといって、嫌われるのが怖くて
昴本人には何も言えない。



“あたしだけを見て”

そう言えたら、どんなに楽になるかなぁ。



…なーんて、ね。

そんな事言ったら
きっとあたしは昴に幻滅されるってオチなんだ。


だけど
それだけは、嫌だから。

昴の彼女って立場は、誰にも譲りたくないから。



こぼれそうになる思いに、毎日蓋をして。


今日もあたしは余裕なフリをするの。




だって昴の右側は
あたしだけの場所なんだもん。



唯一、あたしは彼女なんだって思えるのは

昴の隣。



それだけ、なんだもん。







< 7 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop