素直になんかなれない

そんな俺の質問に
たけ兄はポケットからタバコを取り出すと、ライターで火を付けながら言った。



「そんなの、考えるまでもない事だよ。」

「え？」



さも、当たり前かのように

「俺が真弓を必要としてるから。」

そう、一言だけ。




―――必要？


たけ兄が落とした言葉と同時に流れ出る煙を、俺はぼんやりと追い掛ける。


そして一瞬だけ俺に視線を投げたたけ兄は、ふっと口元に笑みを浮かべて続けた。




「俺はさ、どーしようもないくらい情けない男だし、逆に真弓には勿体ないくらいなんだ。」

「…え、たけ兄…が？」

「そ、俺が。」



…でも、たけ兄は何だって出来るじゃないか。

勉強だって、スポーツだって
何だって余裕でやりのけて。


人付き合いでも
何でも、俺はたけ兄は到底及ばない。


そんなたけ兄が、真弓さんに勿体ないなんて…。




「そんな事ないって思うか？」

「……そりゃ、たけ兄…だし。」

「ははっ、そっか。」