素直になんかなれない
悩みが解決された事で
俺は「よし!」と言って立ち上がると
躊躇う事なくたけ兄に告げた。
「たけ兄、俺行くわ。」
迷いは、もうない。
あるとしたら
寧々を想う、この気持ちだけで。
俺の発言に、たけ兄は一瞬きょとんとしたものの
すぐに意図を察して言ってくれた。
「おう。頑張れ、昴。」
―――頑張れ。
たけ兄の“頑張れ”は、どんな言葉よりも
俺の背中を押してくれる。
俺がずっと目指して来た、男の中の男。
俺も、いつかたけ兄のように
寧々を幸せにしてやりたい。
たけ兄のように、とはいかなくても
俺なりの気持ちで。
寧々を、絶対幸せにするんだ。
そう心に誓うと、俺はたけ兄の部屋をあとにした。
目指すは、愛しい人。
寧々の元へ―――。
「さすが、俺の弟だなぁ。」
なんて笑うたけ兄の声は
走る俺には届かなかったけれど
たけ兄がくれた言葉ひとつひとつが、胸に焼き付いていた。