素直になんかなれない


見慣れた住宅街を
猛ダッシュで走り抜ける。

夜空に浮かぶ三日月の微かな明かりが、俺の行く手を優しく照らしてくれていた。



後先考えずに飛び出して来たから
俺は制服にサンダル、と何とも言えないくらい間抜けな格好で。


…これじゃ、まるで田舎のヤンキーみたいだ。



そう思ったけど
とにかく、早く会いたくて。

早く、このありったけの気持ちを寧々に伝えたくて。


無様でも、かっこ悪くても。

今俺が感じてる事、全部
ちゃんと寧々に伝えよう。



きっと寧々の事だから、そう簡単に許してなんかくれないだろうけど…。


それでも、寧々の不安が少しでも軽減されるように
素直なまま、この想いを

残らず全て、ぶつけるんだ。



そうしたら

またいつもの帰り道を、二人で笑いながら
ずっと―――。




考えたら、もう俺の顔は緩みっぱなし。

ニヤつきながら走ってるとか…俺、どれだけ怪しいんだっつーの。


だけど、俺はそのまま寧々の家まで走った。



そして、いつも帰り道に少しだけ寄り道をする公園に入ると
真っ先に携帯を取り出す。


出てくれるかはわからない。
昨日の事を考えれば、出てくれる可能性はほぼ0パーセント。



でも、俺は迷わず寧々に電話を掛けた。


頼りなく浮かぶ三日月に、寧々の事を想いながら。







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