素直になんかなれない
諦めかけていた希望に、一筋の光が差し込む。
俺は、その光を途切れさせないよう
必死で言葉を探した。
「い、今俺、寧々ん家の近くの公園居るんだ!」
『…今…?』
「そう!ちょっと話したい事あって、」
ごめん、こんな時間に、と努めて控えめに付け足す。
俺が家を飛び出して来たのは、たしか21時半すぎ。
という事は
多分、今は22時を回ってるだろう。
こんな時間に、寧々は家から出る事なんか許されないはず。
…バカだな、俺。
よく考えればわかるはずなのに…焦りすぎだっつーの。
俺はぐしゃぐしゃと髪を掻くと
「でも、出て来られないならいいんだ!明日でも別にいいし、」
誤魔化すように早口でまくし立てる。
だけど、返って来た寧々の言葉は
俺の予想とは反していて。
『…ううん、大丈夫。』
「え?来て、くれんの?」
『うん…。あたしも、ちょうど話したい事あったし…、』
「マジ!?じゃあ待ってっから!」
急速に高ぶった気持ちに、電話を切った俺は
落ち着きなく公園をうろつき始めた。
寧々に会える。
そう思うと心は飛び上るほど、跳ねまくり。
どんだけ単純なんだ、と自分自身に突っ込んでみるけど
嬉しい気持ちはやっぱり隠し切れなかった。