素直になんかなれない


「寧々っ!」


寧々が現れたのは
電話を切ってから10分程度経った頃だった。



こっち、こっちと手を振る俺に
寧々は明らさまな作り笑いを浮かべる。


きっとまだ、昨日からの喧嘩の事を気にしてるんだろう。

その顔には、余裕の欠片すら見えなくて
どことなく悲しみが滲んでいる。


おそらくたくさん泣いたであろう、その真っ赤な瞳が俺の心に突き刺さった。




…でも、寧々。

もう、寧々にそんな顔させないよ。



俺は、決めたんだ。

もう寧々の事を不安にさせないように頑張るって。


俺はバカだし
友達の事も大切だから、全部が全部寧々の言う通りにはしてやれないけど

その分、たくさん俺の気持ち伝えるから。


伝わるまで、ずっと。


だからさ、寧々。

また、いつもみたいに笑ってよ。



泣いたら笑って
その繰り返しを乗り越えて、二人でずっと一緒に…。





「……ごめんね、遅くなって、」

なかなか出てくるタイミングが見つからなくて、と呟いた寧々に
俺は大袈裟に首を振って答える。


「全然っ!んな事気にしなくていいって!」






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