素直になんかなれない
「寧々、」
グラウンドで練習をするサッカー部に気を取られていると
ふと隣から聞こえた声。
視線をずらせば
「ん、」って右手を差し出す昴。
夕焼けに照らされた昴の手のひらが、ヒラヒラと揺れる。
今すぐにでも伸ばしたい衝動に駆られるけど、あたしの答えはいつも同じで。
「…やだ、みんな居るもん。」
だって昴は人気者。
どこに居たってみんなが話掛けて来るから。
現にほら。
「昴先輩ーっ!もう帰るんですかー?」
グラウンドから突然飛んで来た声。
呼ばれた昴は、伸ばした手をポケットに入れて振り返った。
「おー、吉田!頑張ってるー?」
昴が返事を返した先には、ユニフォーム姿の小さな男の子。
吉田、と呼ばれた彼は
「えへへ、まぁ。」なんて言って笑った。
その笑顔が、ヨッシーにそっくりで
笑う度頬に出来るえくぼは、やっぱり姉弟だなって思う。
…それにしても。
昴ったら、あたしの存在忘れてない?
そう思ってしまう程、ヨッシー弟と喋ってるし。
…もう、何だかなぁ。