素直になんかなれない


そんな俺に、寧々は困ったように前髪を触った。


前髪をいじる時は
寧々が考えてる時のサイン。


4ヵ月、と俺たちの付き合いは短いけれど
こんな小さな仕草ですら、俺の心を揺さぶるんだから

やっぱ、俺寧々が好きだな、なんて思ったり。



って、今そんな事考えてる場合じゃねーって!



そう思いながら、不自然に「んんっ、」と咳払いをし
深く深呼吸する俺。



だけど

伝えたい事
言いたい事は腐る程あるのに

何故か、本人を前にするとなかなか言えなくて。



沈黙だけが、虚しく俺たちを通り抜けた。



でも、ここで躊躇ってちゃ男としてかっこ悪い。


たまに走り過ぎてゆく車の音を聞き流しながら
ついに俺は口を開いた。



「あ、あのさ、」

「…うん。」

「昨日の事、なんだけど…。」


そこまで言うと
寧々は突然、俯いてた顔を上げて俺を見据える。

その視線に、ドキっと胸が高鳴ったのがわかった。


でも、寧々はすぐに視線を下げる。


不思議に思い、「寧々?」と呼び掛けると
寧々の口が小さく言葉を吐き出した。



「…その前に、あたし……昴に言いたい事がある…の。」






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