素直になんかなれない
見上げた空には、細くて頼りなくて
だけど神々しく輝いた三日月。
溢れて止まらない涙が、あたしの視界を邪魔して
月をゆらゆらと揺らした。
ゆっくりと視線を自分の手元に下ろすと
震えた手の平を、濡れた瞳で見つめる。
この手が、昴と重なる事は
もう、ない。
そして、ぎゅっと拳を作り
瞼を閉じた。
出した答えは間違ってなかったのか、なんて
今はまだ、わからないけど
それでも――――…。
瞼を上げる。
はぁ、と白い息を吐き出すと
あたしは振り返らずに言った。
「…話は、それだけだから。」
涙は、もう止まっていた。
声だって震えてない。
別れ話をしたにしては、上出来だと思う。
昴からの返事はなかったけど
それが答えなんだ、と思いあたしはゆっくりと歩き出した。
ここを出たら、あたしたちは
恋人から、友達………いや、ただのクラスメートに戻るんだ。
ただ、好きだという気持ちだけでいられた
あの頃に。