素直になんかなれない


ゲラゲラと聞こえる二人の笑い声に、つまんなくて地面に転がった石を蹴ってみる。


昴は、いつもこう。


人当たりよくて
お喋りが大好きで。

話す事だって
友達の事ばっかり。


甘い雰囲気とか、普通の恋人がするような会話なんて
記憶の片隅にですら存在しない。

だからたまに、あたしと居て楽しいのかな?って不安になる。



でも、そんな昴に惹かれたくせにあたしって奴は本当に矛盾だらけだ。

独り占めしたい、なんて言ったら昴は何て言うかな。


ふとそんな事を考える。





しばらくすると

「寧々、お待たせ!帰ろ!」

笑顔の昴が、あたしの肩を叩いた。



それだけで
きゅん、って縮まる心臓。

触れられた肩が
焼けるように熱い。



「……、」

だからあたしは口を閉ざして
昴から離れて歩き始める。



昴は、ズルイ。


そうやって、何の躊躇いもなく触れて来てはあたしをときめかせて

それでいて、優しくて。



やっぱり
あたしばっかり好きみたいで
何か悔しいよ…。




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