~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ- Ⅱ 竜と炎の王
 *

 呆然と立ち尽くす藍奈を見て、茜は恐る恐る声をかける。

「あ、藍奈さん……?」

 藍奈はしばらく放心したように硬直して、突然くすりと笑った。

「バッカみたい」

 走り去った麟紅の顔を思い出し、さらに笑いがこみ上げてきた。

「フフフ、なにがわかったか? よ。バカにしてんじゃないわよ」

「あ、藍奈、さん?」

「あ、アカネ」

「え?」

「妖術はいいわ。もう必要なさそう」

 呆れたように自嘲して、それからこの家の車庫に目をやった。
 そこには紫音の自転車と、麟紅が置いていった、そして乗らずに残していた自転車があった。

「すぐに追いつきましょ」

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