鬼 鴉【総集編】



闘兵衛が長崎を目指し山を出て、二日目が過ぎている。



先に長崎に到着した桃華は、街に漂う不穏な空気を察知していた。


「……不気味、ね」


桃華は、街行く住民を見て呟く。

街全体が、ピリピリとしている。

これから起こる何かに、畏怖しているようであった。



桃華は腰に差した大小の太刀に腕を掛けると、街を歩き出す。


黒い長髪を馬の尻尾のように結って垂らし、その顔は眉目秀麗、訳あって侍の恰好をしている男装の麗人である。



(爺が襲われ、賊はこの地を手掛かりに証拠を残したが……、目的は一体なんなのだろうか?)


桃華は屋敷を襲われてから長崎に来るまでの四日間、その謎ばかりを考えていた。

< 155 / 1,582 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop