鬼 鴉【総集編】
闘兵衛が長崎を目指し山を出て、二日目が過ぎている。
先に長崎に到着した桃華は、街に漂う不穏な空気を察知していた。
「……不気味、ね」
桃華は、街行く住民を見て呟く。
街全体が、ピリピリとしている。
これから起こる何かに、畏怖しているようであった。
桃華は腰に差した大小の太刀に腕を掛けると、街を歩き出す。
黒い長髪を馬の尻尾のように結って垂らし、その顔は眉目秀麗、訳あって侍の恰好をしている男装の麗人である。
(爺が襲われ、賊はこの地を手掛かりに証拠を残したが……、目的は一体なんなのだろうか?)
桃華は屋敷を襲われてから長崎に来るまでの四日間、その謎ばかりを考えていた。