鬼 鴉【総集編】
「……っ!??」
しかしながら、闘兵衛の周りに人はいない。
遠巻きに闘兵衛を囲み、驚きの言葉や、うたぐりの声を各々が囁いているのだった。
確かに、闘兵衛はこの街ではよそ者であり、目立つのは当然といえる。
だが、それだけが理由では無い。
闘兵衛が、その嵐の中心にいたからである。
人の口に戸は建てられないモノ、闘兵衛の存在は街中に知れ渡っていた。
「……」
そんな住民らをまったく無視し、闘兵衛は長椅子に腰掛けている。
いくら犯人では無いとはいえ、役人が殺されているのだ。
長崎奉行所も、動きだしている。
しかし、闘兵衛は動かない。
まるでナニかを待つように、その場に居座っているのだった。