鬼 鴉【総集編】
「……私の名は、皐月と申します」
懇切丁寧に名乗った女、皐月は頭を下げる。
切れ長の眼に、形の良い鼻と口、首程の長さで切り揃えられた黒髪。
一見美人ではあるが、その表情は人形ように微動だにしない。
「……あぁ、その声だ。皐月サンとやら、何故、俺の事を知っている?」
闘兵衛は、事の成り行きを呆然と眺める銃佐ェ門と禁を無視し、皐月との会話を続けていく。
「貴方が長崎に来る事は紙洲の行動から、予測しておりました。……少々早かったですが、ね」
「お前、鬼鴉だな?」
皐月から淡々と発せられた言葉に闘兵衛は、未だ己を縛り付ける呪文を尋ねるように、口にする。
「いいえ、私は鬼鴉を滅ぼす者。……貴方の出方を、確かめに参上致しました」
『スランッ』
そう言い放つと、皐月は背中の大太刀を引きずり出すように、抜いたのであった。