鬼 鴉【総集編】
「……緒方様は、どうでしたか?」
皐月の確かめるような質問に対し、闘兵衛は眼を綴じ、感慨深く答える。
「俺が、唯一本物の侍をあげるとすれば、あの人ダケだろう……」
皐月は大太刀を脇に置くと砂地に片膝をついて、闘兵衛に向き直った。
「緒方様は、自分が戦いに敗れ死んだとしても、貴方を恨むな。と言われましたが……、理由が少しだけわかったような気がします」
皐月から齎された剣山の言葉に、闘兵衛は一瞬だけ頬を緩ませ、胸を撫で下ろす。
あの戦いが凄惨なモノだけでは無く、男と男の、意地を賭けた闘いであったと、自負できる。
もっとも、そんなモノは人間の美意識にしか過ぎない。
愚直なまでに、己の筋を通したが故の結果でもあった。