鬼 鴉【総集編】
衛藤屋の大旦那、誠次朗の評判は非常に悪い。
町人、商人仲間、果ては侍、浪人にまで恨まれている。
原因は、その強欲振りにあった。
金貸し、物売り、相手のけつの毛まで毟り取る商いをおこなっている。
――貧乏長屋にて――
「俺の、知ったこっちゃない……」
闘兵衛は紙洲を睨みつけながら、呟く。
「……もう一度言うゾ、手を貸せ」
その睨みに紙洲は引かずに、さらに口を開いた。
事の発端は、紙洲が衛藤屋の警護の任を請けた事にある。
誠次朗いわく、身に覚えがない。らしいのだが、命を狙うという脅しの文が、衛藤屋宛てに届いていた。
その身に覚えがあるからこそ、ソレに危険と恐怖を感じるモノである。
誠次朗は、慌てて紙洲に泣きついたという事だ。