鬼 鴉【総集編】
袴の用なものに、腰までの外套を羽織っている。
伸びた髪を無造作に後ろでしばっているだけの、一見して、山から下りてきた普通の青年だと思われた。
ただ、目つきが、非常に悪い。
まるで獣、狼のような、眼光をしていた。
「……知ってるの、か?コレを?」
青年はその鋭い眼光を飛ばしながら、侍に紙切れを突き付ける。
「なるほど……、その顔じゃあ誰も答えないだろうな?」
侍は、その言葉を放った途端に太刀に手を掛けるハメとなった。
原因は、青年にある。
怒りを表にした程度の、生易しいモノではない。
周りの空気が変化するほどの、凶暴性を抜き放ったからであった。
「刀持ちごときが、調子にのるなよ?……俺は、侍ってヤツが、大嫌いなんでなぁっ!」
青年は侍に対し語尾を荒げながら、放った殺気を徐々に高めていく。
青年と侍の間、膨れ上がった殺意の空間が今にも弾けようとしていたのだが、予想外に先に動いたのは侍の方であった。