鬼 鴉【総集編】
膠着状態のまま、闘兵衛と老人が睨み合う。
「……爺っ!!大丈夫かっ!?」
突然、障子が開かれて、室内から一人の人物が飛び出し、叫んでいた。
「桃、太郎……、か?」
闘兵衛はその人物の姿を視界に入れ、困惑しながらも口を開く。
桃太郎は右手に抜刀された太刀を掴み、臨戦体勢である。
襦袢のみの、着物の下に着込む肌着姿だけなのだが、違和感があった。
胸の膨らみ、腰の括れ、女性特有の体型を持っていたからである。
「闘兵衛……」
桃太郎は、闘兵衛の姿を確認すると静かに呟き、太刀を納めた。
確かに、桃太郎である。
拍子抜けしたように呆気に取られた闘兵衛は、老人との闘いなどドコかに吹き飛ばしてしまい、膨れ上がった殺意を納めていく。
「……お嬢、知り合いですかの?」
老人は場の空気が平定した事に気付いたのか、槍を垂直に立て刃先を背けると、のほほんと口を開いたのであった。