【短編】桜花爛漫
あの日の出来事を思い出し、賑やかな花見客を遠目に眺める。
あれから一週間。
随分前のように思えるのは何でだろう。
「本当言うとね……。彼とは大分前から微妙だったんだ」
「えっ? そうだったの?」
驚く七瀬を見て、コクンと頷く。
「それでも私は好きだったから、必死にしがみついていたのかな……。
彼が他に気になる子がいたことも知っていたのに、知らない振りをしていたし」
偶然見てしまった女の子と二人で歩く姿。
長年一緒にいたから、その時の彼の表情を見て感付いてしまったの。
一緒にいてもどこかうわの空だった彼の理由を……。
「ま、あっけなくヒデが終止符うってくれたけどね」
七瀬の顔を見ながら苦笑する。
あの出来事がなければ、いつまでもズルズル続いていたかもしれない。
すれ違う気持ちのまま……。
だから、ヒデには少し感謝している、いるんだけど。
「だけど、やっぱりあのキスはありえない!」