【短編】桜花爛漫
* 心に桜、咲き乱れる



一週間というものはあっという間で……。

あの衝撃の告白をされてからというもの、考えるのはヒデのことばかり。

あの後、みんなの元に戻っていなかったヒデ。

教育実習に忙しいみたいで、あれから一度も会っていないし連絡さえとっていない。


「どうしよう……」


ヒデが勝手に約束をした今日。

行くべきか、
行かないべきか――。

未だ答えを出せずにいる。


それなのに、私は鳴らない携帯を握り締めたまま、あの場所へと向かっていた。


あの低くて細い
桜の木の下へと――。



ヒデのことばかり考えてはいるものの、未だ別れた彼への想いも捨てきれない。

もし、ヨリを戻そうと言われたら喜んで戻りそう。

こんな気持ちを抱えたまま……。

ヒデが本気であるなら、なおさらどんな顔して会っていいのか分からない。


どうするべきか。
私は一呼吸して、俯いていた顔を上げた。


西の空を沈みかけた夕日が赤く染め始める。

いつの間にか満開を迎えた桜が紅く染まる。


風が吹く――。

一片、二片……。
無数の花びらが音を立てて散っていく。


あっ。

紅色の視界の先に黒い人影が映り、その場に足を止めてその姿を目で追った。

だんだん近づく人影は、私に向かって手を振る。


「お、一週間ぶり」




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