【短編】桜花爛漫

「あっ、桜」

「えっ?」


もう一方の手が私に近づいて、頭をかすめる。

髪の毛一本にでさえ神経がいっているんじゃないか……そう思うほど敏感に感じる。

ドキドキが止まらない。


「ほら、頭に花びら」


目の前に手のひらを広げて、一片の花びらを見せてくれた。

その上でユラユラ揺れる花びらに視線を向けていると、突如頭上から声がした。


「だから、結依は隙ありすぎ」



「……ヒデが慣れているだけでしょ?」

「まさか。この三年間手出したのは結依だけだし。ずっと片思いしてたんで」


クスクスと笑うヒデは、今にも唇が触れそうなほど至近距離に迫っていた。

避けようと思えば避けられるはずなのに。

動かない体。


「手も振りほどかないし、避けないし? 肯定って意味で捉えていいのかな」


私は自然と目を閉じていた。

タイミングよく吹き始めた風が髪をなびかせる。


この時……。

ヒデとキスしてもいいって思えたんだ。



そして……

あっ……あれ?




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