【短編】桜花爛漫
自分でもなんてひどいことを言っているんだろうって思った。
ヒデの気持ちを否定するようなこと。
「ふーん、そっか。分かった」
だから仕方ない。
ヒデの低くて憤りを感じるような声を聞いて、胸がズキンと痛んでも。
それは、自分のせい。
「ごめんなさい。じゃあ行くね」
ヒデに背を向けて歩き始める。
これ以上一緒にいても傷つける言葉しか出てこない。
ヒデの気持ちも自分の気持ちも信じられない。
それなのに、鼻の奥がツーンとして零れ落ちそうになる涙。
何て自分勝手。
自分自身に憤りを感じながら、ため息をついた次の瞬間――。
「っ……!!」
驚いて言葉にならなかった。
突然、後ろから覆いかぶさるように抱き締められていた。
ヒ……デ……?
温かくて優しい体温が胸に突き刺さる。
きつく抱き締められた体は身動き一つできない。
「俺の気持ち見くびんなよ」
ため息まじりに聞こえた声は、背筋が凍りつきそうなほど低く冷たい声。
ヒデを……
初めて怖いと思った。
カタカタと震えだす体。
そんな今にも泣きだしそうな私に届いたのは、
「アハハッ。ごめん、きつく言いすぎたかな?」
拍子抜けするくらい明るいいつものヒデだった。