【短編】桜花爛漫
沸き上がる歓声に乾杯の音頭。
そこらじゅうに敷かれたブルーシートに大量の空き缶。
この辺りで有名な桜の名所であるこの場所は、見頃を迎えて多くの花見客で賑わっていた。
「結依どこ行ってたのー?」
「ごめん、ちょっと散歩」
「あれ、ヒデは?」
「……さっきまで一緒にいたから、そのうち来るんじゃない?」
私がヒデと一緒にいたからって、周りは特段気にするわけでもない。
みんな大学入学以来の仲だから。
男女合わせて七人。今まで恋愛に発展した人はおらず。
本当に仲の良い友達――
だったはずなんだ。
「ういーっす!」
いつものように何事もなく戻ってきたヒデ。
その声に一瞬体が反応する。
「ヒデ何してたのよ〜っ」
「悪い悪い、ちょっとブラブラ〜っと」
さっきまでの出来事が嘘かのよう。
直ぐにブルーシートに座ったヒデは、豪快にビールを飲み始めた。
ちょうど真正面に位置するヒデ。
その上空には、桜がたくさんの花を咲き誇らせている。
私が見ているのは……
桜?
それとも……。