マーブル
頬を押さえる千波さんと、手を振り上げた春樹。
春樹が……千波さんを殴ったんだと気付くまでに数秒。
間に入らなきゃいけない。必死だった。
「止めて……私知らなかったから。私が……悪いんだから」
今更春樹を嫌いになるなんて出来ないよ。千波さんの言った通り、私の中にある想いはもう火種なんてものじゃない。
だけど、知らなかったとはいえ、千波さんを傷付けてしまった事は私の罪だ。
無神経に彼氏が出来たとはしゃいで……あの頃から全てを知っていたんだとしたら、千波さんをここまで追い詰めたのは私だ。
左頬を押さえ、それでも尚負けじと春樹を睨む千波さんに、彼はそっと言い捨てた。