マーブル



「名前は?」



「……凛。あなたは?」



「俺? 浅野春樹、22歳。寂しいときは連絡しなよ」



寂しい時って……ねぇ、春樹。そんなの毎日だよ。声には出せずにそう心で呟く。



本当は、誰かに気付いて欲しかったのかもしれない。こんな私に。



「何で私を連れてきたの?」



なんとかそれだけ聞いた私に返ってきた返事。



「凛の横顔が寂しそうだったから……」



そんな風に言われたら、春樹も私の事気にしてくれてるの? って……期待しちゃうよ?



だけど、聞けないまま。私は春樹と携帯番号を交換してそのまま別れた。



頭の中に強烈な青と、音色と、普段は低いのに歌うと少し高くなる澄んだ声を焼き付けて……。



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