マーブル



写真を撮りたいという記者の要望に応えて、スタッフルーム近くの場所を提供してやると、人が集まり始める。



ある意味、ちょうどいいかもしれない。



俺が凛へ捧げる曲を演奏する日に、こうしてメディアが入れば……それは記録になる。



正直自分でもどうしたいのか分からないけど。



記録に残して、記憶に残したいのか……いっそ消し去ってしまいたいのか。



はっきり出来ないまま時間は刻一刻と過ぎていき……俺の時間がやって来た。



凛が、いつもの笑顔で、いつもの場所で嬉しそうに俺を見てるから



そっと目配せをすると、深く息を吸い込み……指をひんやりとした鍵盤の上へ置いた。



< 134 / 196 >

この作品をシェア

pagetop