マーブル
出勤時間まではまだ時間がある。
携帯を開いたり閉じたりしながら、思うのは春樹の事ばかり……。
メイクを済ませるとキッチンに買い置きしておいたクリームパンをかじってふうっと息を吐く。
「出来ないよ……」
寂しい時は電話しなよ、そう言った春樹の言葉に甘えてしまいたいのに、出来ない。
大体!
なんで今時ケー番な訳?
メールも……聞いておけば良かった。
浮かぶのはそんな自分勝手な怒り。
今更思っても遅いのに、基本メールしか使わない私には、相手の声が突然聞こえてしまう……そんな電話という行為が恐怖なのだ。
いつまで経っても強くなれないな、そう呟くと携帯をバッグへとしまった。
過去のトラウマはまだ、私を縛り続けているらしい。