マーブル



闇の中を私はまた電車に乗り、そして走っていた。



千波さんが搬送された病院、それが書かれた記事を握り締めて。



息を切らして面会受付に飛び込むと、千波さんの名前を告げる。



お願い……ここにいて。



そうじゃなければもう、他に手は浮かばない。



手を合わせた私に、夜間担当らしいおじさんは扉からカップラーメンの香りを漂わせながら気の毒そうに言う。



「先月に退院されてるみたいだけど?」



「……そうですか」



そう言われてしまえば、肩を落として去るしかない。



店を飛び出した時には二人の顔を見て真実を知りたい。



そんな気持ちでいっぱいだったのに、今は急に自分だけが一人ぼっちになってしまったような。



そんな想いに囚われて……苦しいよ。



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