マーブル
第5章 救いの手
彼なら知っているかもしれない。
私がどうして暮らしていたのかを。
携帯のメモリには、お店や、知らない人の名前は一切残っていない。
働いていたお店の電話番号すら分からないなんて、それともお店では無かったのか。
だとしたら……何を?
考えても答えは出なくて……
千波さんが知らない以上、今の私にヒントをくれるのはあの人しかいないから。
震える指で、探し出した番号。
救いを求めるように目を閉じて、発信ボタンを強く押した。