マーブル
なんだ、やっぱりキャッチだったのか。
ホストなのか、風俗店の呼び込みなのか分からないけれど……一瞬でも何かを感じた自分を呪いながら冷たく答える。
「お金なら無いよ? ついでに仕事にも困ってない」
私の服装から、夜の仕事だって思われたんだろう。いや、確かに年を誤魔化してキャバでバイトをしているんだけど。
お金に困ってるように見えたんだとしたら心外だ。男が欲しいと思われたんだったら尚更……。
一瞬だけちらりと男を見つめ、もう帰ろうと腰を上げた。
ところが……
「お金なんていらないって。ま、退屈しのぎぐらいにはなると思うけど?」
苦笑しながらなんの躊躇いもなく手を伸ばしてくる。
信じた訳じゃない。
だけど……差し出されたその手があまりに自然で、つい思わず私も手を出してしまっていた。