マーブル
それなのに、今回は違った。
「俺さ、今回は本気らしい」
「え? どういう意味?」
心臓が嫌な予感でズキズキと痛む。
「一度会っただけなのに、こんなに忘れられなくて……かかってきた電話がこんなに嬉しいなんて初めてで……」
これまでに聞いた事のない春樹の声色に……一気に奈落の底へと突き落とされる。
それなのに
やっぱり私はいい女を演じてしまう。
「分かった。頑張ってね」
搾り出すように告げた私へ、彼の子供みたいに嬉しそうな声だけ残った。