マーブル



春樹が小さなクラブでキーボードを弾いているんだと教えられたのは、知り合って少ししてからの事だった。



どうして春樹にそんな能力があるのかは知らないけれど……彼の奏でる音は、あの日聞いた声よりももっと強い力で私を惹きつけて。



賑やかな音楽も無い、派手な照明も無い。



けれど……この店に人が集まるのは春樹の音に包まれた時の神秘的なヒ-リング効果なのかもしれない。



その日も、仕事を終えて、私はお気に入りの春樹に近い壁際にもたれ掛かっていた。



そんな私の背中から聞こえた声……。



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