マーブル
行きたいなら何処へでも行けばいい。
そう思うと心が軽くなる。どうせ行き場なんて無いんだから。
立ち上がった私を見て満足そうに微笑むと、手を繋いだまま……まるでこの街が自分の庭だとでも言うように、すいすいと裏道を抜けて行く。
柄の悪そうな奴らが向ける好奇の視線にも動じる事無く堂々と。
そのまま……一言も話さないまま到着したのは、一軒の小さなビルの裏手。
螺旋階段を上ると一つのドアを開いて……意外に筋肉質な体に隠れていた私が身を乗り出すとそこはどうやらお店のようで。
「適当に座ってて」
裏口から背中を押され、一人で突然広い空間へと放り出される。
「ちょっと!!」
慌てて振り返った時には、スタッフオンリーの文字が並ぶ扉は閉じられてしまっていた。