マーブル



16の秋だった。



その人が家の中で倒れ、もう既に息をしていない姿を見つけたのは。



「おい!!」



俺の声はもう、届かなかった。



散らばる薬瓶の真ん中で、不思議と涙は流れなかった。



俺の存在を隠したまま、きっと心は父親の事を想っていたんだろう。



精神的に崩壊しかけていたのは……



気付いていたのに……。



俺じゃダメだった。



存在しない男に、俺は負けたんだ。



守るんだって、決めていたのに。



< 60 / 196 >

この作品をシェア

pagetop