マーブル
思えば、いつも誰かの顔色を伺いながら生きてきた。
だけど……今の私は違う。
店で演奏する春樹の目の前で、このキラキラ輝く人。皆が憧れる人を独り占めしているという事実は優越感でもあり、少しの自信へも変わって行く。
キーボードをかき鳴らすふとした合間に目が合うだけで……それだけで幸せで。
未だ失ってしまった記憶は戻らないけれど、春樹がいてくれるのならそれは大した事じゃないような気がする。
この街なら未成年の私を雇ってくれる場所だってきっと見つかるだろうし、全てが上向きになったんだって信じて疑う事はなかった。