マーブル



私の家の方向を伝え、ゆっくりとマンションへ近付いて行く。



春樹に隣にいて欲しい。



一人になりたく……ないよ。



そんな願いを無常に引き裂く電話の音。



「ちょっと悪い」



私をそこへ降ろして、携帯の画面を見た瞬間に春樹の表情が曇る。



漏れてくる話の内容からお店かららしい。それも緊急な。



「ここからなら近いからもう大丈夫だよ」



電話を切った春樹に無理矢理な笑顔を作ってみせると、両手を胸の前で合わせてゴメンと本当に申し訳無さそうにするから。



本当は寂しいけど、首を横に振る。



「仕事終わったら電話するから、大人しく家にいろよ」



ぎゅっと抱き締めてから背中を向けた後姿を見送ると、部屋を目指して一人でずるずると歩き出した。



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