マーブル



気付けば店内はまた先程の青い光に包まれて



男が一つ息を吸い込むと、長い指がまるで機械ごと自分の体の一部であるかのようにキーボードへと触れ、交わる。



店内に音が鳴り響いた瞬間に、酔うように目を瞑る人、リズムに乗る人。



聞いた事のない不思議な音が耳に心地良くて……私も思わず目を閉じてしまいそうなのを堪えて



彼の姿を凝視した。



さっきまでとは全然違う。光に包まれたまま、羽根が生えて飛んで行ってしまいそうな程の眩さと脆さの共存。



響き続ける音に、訴えるように歌う声に、込められたそのあまりのパワーは、一瞬で私の心を惹きつけて……



くすぐったいような、痛いような、苦しいような



それが、恋愛感情だと気付くまでに時間はかからなかった。



< 8 / 196 >

この作品をシェア

pagetop