討竜の剣
服の袖を掴んでまくし立てる俺に、町人達は少々たじろいた様子。

「お、俺達もよく知らねぇよ…ただドーラの軍隊も魔法の使える貴族連中も、汚竜には太刀打ちできなくて防戦一方って噂だ…」

「……!」

聞いていられないのか、ナハトが顔を背けた。

「なぁ…あんた」

町人の一人が、俺の背中の剣に気づく。

「もしかしてファイアル人かい?汚竜でも仕留めようってつもりだろうけど」

嘲笑の色すら浮かべて、町人が言った。

「無理だって。さっきの話聞いてなかったのかい?軍隊も魔法も汚竜には太刀打ちできなかったんだぜ?何で一狩猟者の剣が通じるんだよ?」

「っ……!」

その言葉に苛立ち、俺は拳を振り上げて。

「アキラ」

ナハトに制止された。

彼女は町人達に、話を聞かせてくれてありがとう、と一礼して歩き出す。

仕方なく俺もその後をついて行った。

…目の前を歩くナハト。

その華奢な背中は震えていた。

故郷が滅ぶかもしれない恐怖。

大切な人達が命を奪われるかもしれない恐怖。

それでもナハトは自分を抑え込む。

決して取り乱さない。

強いんだな…ナハト…。

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