討竜の剣
それでもライストで話を聞けたのはよかった。

危機的状況は何も変わっていないかもしれないが、それでも『ドーラは既に汚竜によって滅ぼされた』という話ではなかったし、何も知らないまま、悪戯に不安に押し潰されそうになる必要もなくなった。

まだ間に合う。

ドーラは救えるんだ。

俺達二人じゃ微々たる力かもしれないけど、まだ何かを為す時間は十分にある。

だったら今は一刻も早くドーラへ。

「ライストを抜けると…ひとつ…難所がある…」

ナハトが呟いた。

「死霊の山…ドワーフが住む山…彼らの縄張り…」

エルフと同じ魔物…正確には亜人種と呼ばれる者で、人間に対しては敵対こそしないが警戒心が非常に強い。

「ドーラを出て…ファイアルに向かう時も…一苦労だった…」

ナハトがその時の事を思い出しながら言う。

「私一人でも…とても警戒していた…剣を持っているアキラを見て…更に警戒心を強めないかどうか…」

…それでも死霊の山を、ドワーフの縄張りを通り抜けなければドーラには行けない。

だったら考える必要はないだろう。

「早い方がいい…行こう、その山へ」

俺は力強く一歩を踏み出す。

「…うん」

ナハトもまた強く頷き、俺の後に続いた。


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