討竜の剣
ライストの国境を越える辺り。

街道に二人の軍人の姿があった。

「あの軍服…ガーディアン…」

ナハトが呟く。

前々から思っていたのだが、貴族という肩書きを持つせいなのか、土地からあまり出ないドーラ人の癖にナハトは割と物知りだ。

『ガーディアン』

それはライスト国軍のエリートを指す。

主には武芸に優れた兵士が入団を許可される、降魔師護衛団。

厳しい実力試験を経て、基準に達すると認められた者がこの組織に所属できる。

その組織を束ねるのがセリーヌ・W・ドストロフ。

銀髪に碧眼、類い稀な剣腕と優れた頭脳を持つ、ライスト国きっての軍人。
      
『霜刃のセリーヌ』の二つ名は、力と勇敢さを誉れとするファイアルの地にまで届いていた。

「お前達は旅行者か?」

そのガーディアンの軍人が、俺達に声をかけてくる。

「はい…ファイアルの方を護衛につけて…国に戻る途中です…」

ナハトが答える。

上手い受け答えだと思う。

本当の目的をぼかしつつ、嘘は言っていない。

「国とはもしやドーラの事か?」

「はい…私はドーラ貴族…リアリー家の長女ですので…」

彼女が答えると、軍人達は表情を曇らせた。



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