討竜の剣
「我々はセリーヌ様の命により、ここでドーラに向かう旅行者達に注意を促している…」

「…聞いています…国に…獰猛な竜が現れたとか…」

あくまで知らぬふりを通すナハト。

軍人達も、まさか俺達がその竜を討伐に向かっているとは思わないだろう。

「知っているのならば構わないが…努々気をつけるように。よい旅を」

「はい…お勤めご苦労様です…」

貴族流の会釈をして、ナハトが歩き出す。

俺もその後に続いた。

ドーラへの入国禁止令が出ていたら力ずくで押し通るつもりだったが、事を荒立てる必要がなくなってよかった。

流石にライストも他国に強い干渉までは出来ないのかもしれない。

平和とはいえ、この世界は一触即発の状態だ。

迂闊な事は控えた方がいい。

注意喚起に留めている辺り、セリーヌとかいうガーディアンの頭はなかなか切れるらしい。

さぁ、これでライストは無事通過できた。

ここから先が死霊の山。

ドワーフが縄張りとする山岳だ。

焦る気持ちを抑え、ナハトが無言のまま歩く。

俺も少しずつ神経を尖らせていく。

いつでも剣を抜けるように。

ドワーフとて、必ずしも友好的な種族ではないのだから。



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