討竜の剣
豪快に笑いながら、男は俺の背中を叩いた。

「いやあ、てぇしたもんだ!こんなガキが希少種の刃竜を仕留めてくるたぁな!お前は火の民ファイアルの誇りだぜ!見直したぜ小僧!」

彼は更に、ナハトの背中も叩く。

華奢なナハトはそれだけで目を白黒させていた。

「お嬢ちゃんも見直したぜ!たった二人で刃竜に立ち向かうなんて見上げた度胸だ!最初にここに来た時に、嘲笑いなんかしちまって悪かった!心から詫びるぜ!」

…これがファイアルの民だった。

たとえよそ者だろうと、勇気ある者、強い者には敬意を払う。

勇敢な戦士ならば、老若男女問わず認め、称える。

野蛮な連中だとアイスラの奴らは蔑んだりもするが、俺は単純明快なファイアルの人間が好きだし、火の民に生まれた事を誇りに思っていた。

…その日は夜遅くまで大衆酒場に引き止められ、刃竜を仕留めた時の武勇伝を何度となく説明させられる羽目になった。

もっとも、悪い気はしなかったけど。

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